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演 劇
1999年に発表された、野田秀樹作・演出による傑作舞台『パンドラの鐘』。
本作が約20年の時を経て、熊林弘高演出により現代に甦る。そこでキャストのひとりで、昨年から舞台出演が続いている金子大地に話を聞いた。
彩の国シェイクスピア・シリーズ第35弾『ヘンリー八世』で初舞台を踏み、二兎社『ザ・空気 ver.3 そして彼は去った…』でも好演を見せる金子。この2作ですっかり舞台に開眼した金子だが、今回は少し勝手が違うようで…。「舞台は今やっていて一番楽しいお仕事ですね。ただ『パンドラの鐘』は…、やばいです! 熊林さんがとても大切にされている戯曲のひとつなので、すでにものすごいプレッシャーなんです。しかも熊林さんが求められているレベルが尋常ではないくらい高くて…。ただ、役者としてひとつ殻を破りたいと思っていた時期だったので、このような機会をいただけて本当にありがたいです」
物語の舞台は、太平洋戦争開戦前夜の長崎。巨大な鐘が考古学者たちの手により掘り起こされ、それを機に、葬られたはずの古代王国を巡る秘密が明るみになっていく。「熊林さんは北九州のご出身で、戦争や原爆に対して近いところで育っていらっしゃるんですよね。その想いに触れて僕はすごく怖かったのですが、まずは自分の中にある戦争に対する感情、のようなものを納得させなければと思っています。それは苛立ちなのか、怒りなのか、悲しみなのか…。今はまだわかりませんが、そのモヤモヤと沸き上がってきているものが、この作品に取り組む上でのヒントになりそうな気がしています」
今回、熊林ならではの演出となるのが、現代と古代の登場人物を一人二役で演じるというもの。金子は葬儀屋のミズヲと、考古学者助手のオズを演じる。「役についてはまだまだで、漠然とも語りたくないぐらい、一筋縄ではいかない作品だと思います。中でもミズヲが生まれた時の記憶、その景色をお客様に伝えなければならないのは、すごく難しいことだと思っていて。もともと難しい事に挑戦するのは好きなので、逆に燃えてもいます!」
演劇界にも大きな影響を与えている、このコロナ禍。いつ公演中止になってもおかしくない状況下で、金子は、一回一回の公演を「奇跡」と語る。「今舞台に立っていて改めて感じるのは、お客様に来ていただけることのありがたさです。この『パンドラの鐘』でも、観に来てくださる方に少しでも元気になってもらえるよう精一杯頑張りますので、期待していてください!」
取材・文:野上瑠美子
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