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演 劇
舞台『Another lenz』が東京・新宿FACEにて開幕中だ。本作は、新しい演劇のあり方を追求した「AD(Another Demention=別次元)×STAGE」の第一弾で、同じ作品を自分の目で見るか(生観劇するか)、配信のカメラを通してみるか(生配信を見るか)で全く異なる作品に見えるという“別次元舞台”となっている。
初日を前にした、劇場でのゲネプロ(舞台通し稽古)を見た。劇場の中央に舞台があり、観客は「北」と「南」と2つに分かれた客席から観劇する。観客の左右両側(劇場でいえば東西の方向)にスクリーンがあり、その場で撮影されているレンズ越しの映像が放映されている。
とある廃墟で、新感覚ハリウッドホラーの生ライブドラマを撮影しようとしている監督や俳優たちの物語。最大の見せ場は、なんと言っても、劇中にノーカットで撮影される生ライブドラマだろう。パネル式の舞台装置を素早く動かしながら、カメラクルーと俳優が移動して、ドラマが進んでいく。息のあった連係プレーは見事で、レンズ越しからは決して見えない、裏側の世界を垣間見るのが楽しい。
ただ、単なるバックステージものというには惜しい。徐々に明らかになる複雑な人間関係や、人間の表の顔と裏の顔の変化など、あらゆる要素が相まって、多くの観客は、何が「リアル」で、何が「フェイク」なのか、どこまでが「俳優」で、どこまでが「役」なのか、ある種の混乱状態に陥るだろう。俳優としても活動している磯貝龍乎が手掛けた斬新な脚本と演出に思わずうなる。このコロナ禍で、配信される演劇作品は増えたが、これまでの配信作品とは確かに一線を画するとだけ示しておきたい。なお、個人的には、生配信を見てからの生観劇という流れがおすすめしたい。
初日を前にした囲み取材では、本作の見どころについて、出演する太田将熙は「見どころは全部と言いたい」と作品に自信を覗かせ、菊池修司は「個性豊かなキャラクターたちはもちろん、配信と観劇と両方の視点で楽しめること」と語った。また、伊崎龍次郎は、配信ではほとんど出演しない山沖勇輝の名前を挙げて「ぜひ劇場で活躍と勇姿を見てほしい」。稽古で一番苦労した点については、碕理人は「膨大なセリフ量と、生配信における時間調整」を挙げ、AKB48の北澤早紀は「血糊もタバコもアクションも男性とのハグも初めて」と初めてづくしの現場だったことを明かした。
上演時間は約2時間。公演は5月23日(日)まで。休演日の5月20日(木)には、一部キャストによるスタジオツアーも実施される。なお、製作側からは「一部、暴力やグロテスクな表現が含まれております。ご観劇、ご視聴の際にはご注意ください」というアナウンスがある。コメディタッチの場面もあるが、ホラーサスペンスの要素も存分に含まれているので、苦手な人は自身の体調などと相談しながら観劇しよう。
取材・文・撮影:五月女菜穂
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