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2016年に韓国で誕生し、2018年に日本初上陸したミュージカル『マタ・ハリ』が、3年ぶりに再演。6月の東京建物Brillia HALLでの上演を経て、7月10日(土)より愛知、7月16日(金)より大阪での幕が開く。
『ジキル&ハイド』『スカーレット・ピンパーネル』など、数々のメガヒットミュージカルを生み出してきたフランク・ワイルドホーンが作曲を手掛ける本作。この日本版では、初演に続き石丸さち子が訳詞・翻訳・演出を務めている。描かれるのは、歴史に名を残したひとりの女性の愛と悲劇だ。舞台は1917年、第一次世界大戦の暗雲たれこめるヨーロッパ。ヨーロッパ中から人気を集める魅惑的なダンサー、マタ・ハリが、フランス諜報局のラドゥー大佐から目をつけられスパイとなり、運命に翻弄されていく…。
戦時下で苦しむ民衆たちの叫びが音に乗り、胸へズシンと響くプロローグ。そして朱い衣裳をまとったマタ・ハリが現れ、神秘的な“寺院の踊り”を舞い踊る。世界が暗いムードに覆われる中でステージに立ち続け、踊りによって強いエネルギーを放つマタ。演じるのは、初演から続投の柚希礼音と、初出演となる愛希れいかだ。柚希はメリハリのある美しい身体から繰り出されるしなやかかつダイナミックな動きと、妖艶さで魅せる。高圧的なラドゥー大佐に対して余裕ある表情で応じ、運命的な出会いを果たすパイロットのアルマンの前では無邪気な様子でころころと表情を変え、恋する女性の心の動きを繊細に表現する。一方の愛希が演じるマタは、華奢でありながら生命力にあふれ、オーラを放っているよう。指先まで美しい踊りに魅せられる。さらに愛希が表現するマタから感じるのは“芯の強さ”だ。ラドゥー大佐に脅されても動じず、目に強い力を宿して対する姿を見せる一方で、アルマンといるときには強さを解放し、安らぎの表情を見せるなど、それぞれに異なるアプローチでマタを演じている。
また、ラドゥー大佐は加藤和樹、田代万里生、アルマンは三浦涼介、東啓介のダブルキャスト。ラドゥーはマタを利用しながら自身もマタに惹かれていき、感情を押し殺すがゆえに歪んだ愛情を見せていく人物。加藤は冷徹で威圧感のあるラドゥーを作り上げ、田代も高圧的に声を張り上げ、これまでの田代の柔らかな印象を覆す。アルマンは軍人として自身の任務を遂行しながら、マタへの想いを深めていく男。三浦が演じればアルマンの“陰”が際立ち、東が演じれば“包容力”が際立って見える。キャストの組み合わせによって役のイメージがガラリと変わるのが面白い。
過酷な状況の中、時代に翻弄されながらも強く生きたマタ・ハリ。その生き様を劇場で確かめてほしい。愛知公演は7月10日(土)・11日(日)刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール。当日券販売あり。大阪公演は7月16日(金)から20日(火)まで梅田芸術劇場メインホールにて。チケット発売中。
取材・文:黒石悦子
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