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名作『ピーターパン』の小説版をウェンディの視点から翻案。『ウェンディ&ピーターパン』として上演された舞台は、目の肥えたロンドンの観客たちを魅了した。そしてついに日本版の上演が決定。ロンドン版同様、演出をジョナサン・マンビィが担う。そこでタイトルロールのウェンディを演じる、黒木華に話を訊いた。
演出のマンビィとの舞台づくりは、16年の『るつぼ』で経験済みの黒木。当時を振り返る口調は、マンビィへの厚い信頼に溢れている。「すごく丁寧で、役者それぞれのいいところを見つけて、引き出してくれる。物語が広がっていく感じが、とても楽しくて。当時からまた一緒にやりたいですねと話していたので、ジョナサンにとってとても大事なこの作品で、再びご一緒出来ることが本当に嬉しいです」
黒木演じるウェンディが、ダーリング家の長女であることは原作と変わりない。しかしその描かれ方は大きく異なる。「稽古をしている中でウェンディは、家族に大きな影響を与える存在だと感じています。壊れかけた家族を自分がなんとかしないといけないと思っている。ネバーランドに行き、その問題をどう打開していくのか。それがこのウェンディを演じる上でのテーマだと思っています」
そんなウェンディにとってピーターパンとは、どういった存在なのだろうか。「ウェンディの想像の中の登場人物なのかなと思います。だからピーターは、ウェンディが理想とする、魅力的な男の子なのかなと。ロストボーイズたちに『お母さんになって』と言われた時に、『(私がお母さんなら)あなたはお父さんになってくれるでしょ?』と駆け引きしたり。そのやり取りがすごくかわいらしく、面白いなと思いました」
作家のエラ・ヒクソンが本作を書き上げたのは28歳の時。そんな若い視点が、この古典とも言える名作に、新たな疑問を投げかけている。「女性の社会的な立場や成長に、作家のエラさんが注目されているのを感じます。ある男の子が恋に落ちる瞬間、相手の女の子がアイロンがけをしている姿が目に浮かぶ、というシーンがあるのですが、そのことに疑問を持たない方もいるわけですよね。女性がアイロンがけをするものだと。またウェンディのお母さんは、母親であると同時に、自分が社会の中でどう生きていくか模索する姿が描かれています。そういったところがこれまでの『ピーターパン』にはない、興味深い点だと思います」
取材・文:野上瑠美子
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