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甲斐翔真が主演するミュージカル『October Sky −遠い空の向こうに−』が10月より上演される。1999年公開映画『遠い空の向こうに』をミュージカル化、アメリカでのトライアウト版からいち早く日本で初演される注目の作品だ。9月中旬、本作の稽古場を取材した。
この日は初めて1幕全体を通すという稽古内容。開始前に演出の板垣恭一が「今日はとりあえず(シーンを)繋げてみましょう。あれ?という謎があれば、整えていきましょう」と稽古意図を説明する。すかさず栗原英雄が「謎だらけだよ!」と返し、現場は明るい笑いに包まれた。“初めての通し”にあたるキャスト陣からは、一種独特の連帯感、高揚感が伝わってくる。
舞台は1957年、アメリカの小さな炭鉱町。物語は炭鉱の情景から始まり、この話が単なる青春譚ではないことがすぐにわかる。男たちは命の危険と隣り合わせの炭鉱で働いており、その町で育った高校生ホーマーは違う世界へ飛び出していきたいと思っている。そんな中、人類初の人工衛星スプートニクが彼らの住む町の空を横切った――。その日からホーマーと仲間たちはロケット作りに熱中していく。
希望に燃える若者と、行き詰っていく現実に苦悩する大人たちの対比は、『ビリー・エリオット』なども髣髴とするが、本作は主人公たちが高校生というある種将来の選択のリミットが見えつつある年齢であることや、大きな夢の中にも「サイエンスフェアで優勝し、奨学金を得て大学に行く」と現実的な目標設定があることなどで、リアリティがあり、とても共感できるものになっている。ホーマーを演じる甲斐翔真は、夢に向かう一途さの中にも、様々なことに気を遣い悩む心優しさが見える役作り。そんなホーマーだからこそ味方が増えていくのがよくわかる。また、特に星を見上げ夢を歌いあげるナンバーからは、まばゆいほどの“憧れ”が伝わってきて、感動的。おそらく本番での大きな見せ場になるのだろうと楽しみになった。
ホーマーの親友であり一緒にロケットを作るロイ・リーは、阿部顕嵐。1幕ではホーマーと周りの人々との間を上手く行き来する、器用なバランス人間という印象だが、どうやら彼には彼の事情がありそうだ。オデル役の井澤巧麻の調子の良さ、いかにも科学オタク青年といった風のクエンティン役・福崎那由他と、ボーイズたちの魅力も四者四様。一方で栗原英雄、朴路美らが扮するホーマーの家族は、家父長制の色が濃い時代感と、その中でもそれぞれが葛藤していく姿をしっかり描き出す。
1幕終盤、ロケットを飛ばす実験は成功するが、彼らはこのあと夢に手が届くのかは、本番舞台を楽しみにしよう。夢を見て、悩み、迷った青春時代を過ごした人には必ず響くものがあるであろうミュージカルの誕生はもうすぐだ。東京公演は10月6日(水)から24日(日)まで東京・シアターコクーンにて。チケットは発売中。その後大阪公演もあり。
取材・文:平野祥恵
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