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ミュージカル『October Sky─遠い空の向こうに─』が、東京・Bunkamura シアターコクーンで開幕した。これに先立ち行われたゲネプロと初日前会見の様子をレポートする。
元NASAの技術者ホーマー・H・ヒッカム・Jr.の自伝小説『ロケットボーイズ』を原作に、ジョー・ジョンストン監督がメガホンを握った青春映画(1999年公開)をミュージカル化した本作。劇中では、米ウェストバージニア州の炭鉱町コールウッドを舞台に、ロケットに夢を託す高校生の奮闘や彼らを取り巻く人間模様が展開される。
周回する人工衛星スプートニクの目撃を機に「いつかロケットを打ち上げたい」と夢見る主人公ホーマーには、本作で初めてミュージカルのシングルキャストを務める甲斐翔真がキャスティング。閉塞感の漂う炭鉱町を抜け出し、ロケット制作を決心する「星を見上げて」のラストでは昂った気持ちを伸びやかな高音に乗せ、観客を圧倒した。ホーマーの前に次々と立ちはだかる現実のやるせなさ、行き場のない悲しみや葛藤を、甲斐は歌声だけでなく芝居の声色や表情にもにじませる。
ホーマーの悪友で義父の暴力に苦しむロイには、阿部顕嵐。顔のアザを隠すことなく気丈に振る舞う様子に胸が痛む。ムードメーカーのオデルに扮する井澤巧麻は、底抜けの明るさで雰囲気をやわらげ、優れた科学の知識でホーマーの夢に貢献するクエンティン役の福崎那由他は、屈託だらけの序盤からチームの“頭脳”として必要とされ、次第に頼もしくなっていく様子を立ち上げた。彼ら“ロケットボーイズ”の奮闘を応援する科学の教師ミス・ライリー(夢咲ねね)と繰り広げるコミカルな「言われた通りに」に注目したい。
ホーマーの父ジョンに扮する栗原英雄は、炭鉱夫を束ねる自分と異なる人生を歩もうとする息子を理解できず苦しむ。夢を諦めて炭鉱夫になった過去を語る「お前はおまえ」は必聴ナンバーだ。朴?美は母エルシー役。1幕の「地に足つけて」で息子の背中を押す一方で、ミス・ライリーやホーマーの恋人ドロシー(中村麗乃)と歌う2幕冒頭の「最後のキス」で息子と離れがたい気持ちも覗かせ、時代を超えた普遍的な親心を届けた。
ゲネプロ前に行われた初日前会見で、稽古を経てどういうカンパニーになったか問われた座長の甲斐は、演出を手がけた板垣の「僕の演出する舞台には主役・脇役・アンサンブルという隔たりはなく、全員が主役で見せ場を持っている」という言葉を紹介。その上で「まさにおっしゃる通り、主役の集まりみたいなカンパニーになりました」「誰に感情移入しても感動できるようになっています」と手応えを語った。
上演時間は約160分(休憩含む2幕)。東京公演は10月24日(日)まで。その後、11月11日(木)〜14日(日)に大阪・森ノ宮ピロティホールへ巡演する。チケット販売中。
取材・文:岡山朋代
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