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舞台『貴婦人の来訪』が2022年6月1日(水)から新国立劇場小劇場で開幕する。
本作は、スイスの劇作家、フリードリヒ・デュレンマットの代表作で、1956年に初演。全体主義へと傾倒していった社会への痛烈なアンチテーゼとして話題を呼び、その後、世界各地で上演されてきた。舞台のみならず、映画やオペラ、ミュージカルとしても上演され続けている名作だ。
今回は、新国立劇場2021/2022シーズンのシリーズ「声 議論、正論、極論、批判、対話...の物語」の最終章。演出を手掛けるのは五戸真理枝。新国立劇場の『どん底』(2019)で見せた、大胆かつユニークな演出も記憶に新しい彼女が、どんな『貴婦人の来訪』を展開するのか。開幕を控えた5月中旬、オンラインで稽古場を見学した。
舞台は、産業が廃れ、貧困にあえぐ小都市ギュレン。この町の出身の大富豪・クレール夫人が帰郷する。大金の寄付を申し出た彼女は、条件としてかつての恋人の死を求める。夫人は恋人に捨てられ、町を去っていたーー。
この日は、冒頭の場面から演出を詰めていく稽古。1時間ほど見学していたので、ある程度長いシーンを見られるかなと思っていたのだが、いい意味で稽古が進まないことに驚いた。演出の五戸が芝居を止めて、気になるポイントを指摘すると、俳優たちがそれぞれに提案や質問をする。試す。そしてまた議論をする。そう、シリーズのタイトル通り、とにかく稽古場で「対話」がなされているのだ。オンラインでの見学だったので、会話の一言一句を聞き取れたわけではないのだが、カンパニー一同がこの名作を咀嚼し、体現するプロセスを見た気がした。小山ゆうなの翻訳もあわせて、新しい『貴婦人の来訪』が見られると期待したい。
五戸はオフィシャルのインタビューで「お客様に働きかけることの多い舞台にできたらいいですね。劇中の出来事やキャラクターに心揺さぶられるご自身の、真の想いや欲するところに気づき、それを認めて先に進むための糧にする。この作品をご覧いただき、そんな発見をしていただけたなら、とても嬉しく思います」と語っている。
公演は6月19日(日)まで。出演者は秋山菜津子、相島一之、他。チケット発売中。
取材・文:五月女菜穂
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