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今しかできない若さと表現 舞台『BLINK』上演中
2022年06月28日 10時41分 [演劇]
撮影:阿部章仁

舞台『BLINK』があうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)にて上演中だ。

1977年生まれの英国の劇作家フィル・ポーターによる『BLINK』(瞬き、きらめきの意味)は、ジョナとソフィという2人の登場人物が一風変わったラブストーリーを紡いでいく作品。2012年にロンドンで初演され、大ヒットを記録。日本初演となる今回、はかなく切ない青春を描いた本作に相応しく、若手演出家の荒井遼と若手俳優4人による上演が実現した。

世間知らずで一途なジョナ(西村成忠/広田亮平)と、なかなか自分の存在を認められないソフィ(湯川ひな/黒河内りく)。二人は偶然にも同じような人生経験をしている。二人とも最近、親を膵臓がんで亡くしたのだ。自給自足の宗教コミューンで育ったジョナは、コミューンを抜け出し自立しようとする。父を亡くして一人ぼっちになったソフィは、悲しみを吹っ切ろうと父の部屋を改装して貸すことにする。やがてジョナがその部屋に引っ越してくると、二人の“出会わない”奇妙な関係が始まり、やがて惹かれあっていく......。

開幕を前に行われたゲネプロ(総通し舞台稽古)を観た。本公演は二人芝居を2ペアで上演するが、広田亮平と黒河内りくによる回だった。

基本的にジョナとソフィの独白によって展開する、“不思議”な舞台。自身の環境を物語る台詞が中心で、脚本を読むだけでは飽きてしまいそうなものだが、荒井の演出によって、作品は立体的に仕上がっていた。複数台のOHP(オーバーヘッドプロジェクターの略。昔、小学校の授業などで使った投影機のことだ)を活用して、台詞に関連する写真などを写し、インスタレーション空間をリアルタイムで作り出したほか、俳優たちを走らせたり、転換させたり、舞台の隅々まで動かす設計。実験的でどこか儚さもあって、非常に面白い演出だった。

俳優たちも健闘した。フレッシュな面々が体当たりで作品に挑んだ様子が見て取れた。技巧的ではないかもしれないが、それがいい。今しかできない若さと表現がそこには確かにあって、『BLINK』という作品を絶妙なバランスで成立させたと思う。それぞれのペアで色が全く違うという。2ペアを見比べるのも面白いだろう。

なお、本公演では観劇の敷居を下げたいと、チケット1枚で2名の来場を可能としている。これを機に観劇をしてみてはいかがだろう。上演時間は、途中休憩なしの約85分。公演は7月3日(日)まで。

取材・文:五月女菜穂

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