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国会議員による試写会要求を発端に、上映禁止が相次いだドキュメンタリー映画『靖国』。この一連の流れを受け、『靖国』への政治圧力及び上映中止に抗議する緊急会見が4月10日に参議院議員会館で行われた。当日はジャーナリストの田原総一朗ら20名近くのメディア関係者と、当事者のリ・イン監督が出席。「この映画は隠し撮りが1つもない。すべて正面から撮っている。ナレーションも一切なく、あるのは現場での声だけ。これを反日だの言うのはとんでもない間違い」と語った田原をはじめ、各自が“表現者”として現状に憂慮するコメントを発表した。
この日、登壇したのはジャーナリストの田原総一朗、野中章弘、坂本衛、原寿雄、斉藤貴男、漫画家の石坂啓、映画監督の是枝裕和とジャン・ユーカーマン、作家の鈴木邦男、立教大学教授の服部孝章、「創」編集長の篠田博之、「日本ビジュアル・ジャーナリスト協会」共同代表の豊田直巳、「DAYS JAPAN」編集長の広河隆一。各界で第一線で活躍するジャーナリスト、映画人、作家、漫画家が集まった。また、ニュースキャスターの筑紫哲也は今回の『靖国』上映禁止を「大事なことは、誰もが自分の好きな映画を観ることができ、その映画が好きな人とも自由に議論できる社会を創ることです」とのコメントを寄せた。
上映中止までの過程と現在の状況が製作者サイドから説明された後、登壇した全員がそれぞれに発言。石坂は「南京大虐殺、集団自決、従軍慰安婦、靖国。今、どのテーマで漫画を描いても雑誌で取り上げられない。10年前はギリギリできた。10年前なら観れた映像や写真、絵が私たちの前から消えている。我々から観る機会が奪われてきている。これは忌々しきことだと思います」と今回の上映禁止を危惧。一方、是枝は「内容について“反日”であるという批判が出ているがそれは上映した後で起こるべきリアクション。そこで多様な意見が交わされ、考えを深めていくのが成熟したパブリックの在り方だと思う。僕たちマスメディアに関係する人間は、権力ときちっと対峙し、パブリックを成熟させていく責務を負っている。それを共有の認識としてもってほしい」と語り、一連の流れに強く抗議しながらも、“公共”の大切さを考えるよう取材陣及びマスコミ関係者に呼びかけた。リ・イン監督も「この映画が成立できないように議員が働きかけているとしか思えない」と苦悩の表情を浮かべた。
『靖国』はリ監督が、「靖国」をテーマに取材。昭和8年から12年間にわたり、靖国神社の境内で作られていた日本刀“靖国刀”の刀匠である男性を主人公に、軍服姿の活動家や合祀された故人の魂を取り戻そうとする台湾や韓国の遺族ら終戦記念日に靖国神社に集う人々の姿を映し出す。その映像を通し、靖国神社という存在を見つめていく。
現在、大阪をはじめ各地で上映を希望する映画館が出てきている。だが、上映に向けてはまだまだ予断を許さない状況だ。“観る”“観ない”は観客が決めること。いち映画ファンとしては、その観る機会を奪われることだけはあってはならないと思う。
取材・文 水上賢治
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