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新進作家の動向を反映する美術作品の公募コンクール・FACE展。その10回目となる展覧会『FACE展2022』が、3月13日(日)まで、東京・SOMPO美術館にて開催されている。“年齢・所属を問わない新進作家の登竜門”を掲げるFACE展らしく、今回出品されたのは、8歳から94歳までという幅広い年代による1142作品。そこから長時間に及ぶ審査を経て入選した、83点が紹介されている。
会場に足を踏み入れた途端、心が浮き立つような感覚を味わった。もちろん本展は新進作家のための公募展であり、彼ら、彼女らのアーティスト人生を左右する厳粛な場でもある。またコロナ禍も影響しているのか、作者の不安や鬱屈した想いがにじみ出ているような作品もある。だが展示空間の大半から感じられたのは、自分が作りたいものを作るんだという、創作に対する前向きな想い。そこにはアートとはこうあるべき、といった堅苦しさは皆無であり、それぞれの作品が伸びやかで、緻密で、自由で、オリジナリティに溢れ、アートを存分に楽しんでいる、ということをひしと感じられる。
展示の最初を飾るのは、今回の“グランプリ”受賞作品である新藤杏子の『Farewell』。このタイトルには“長い別れ”との意味があるという。鏡をうっとり見つめていた5歳の息子の姿に、湖に映る自身の姿に見惚れるあまり、衰弱死したナルキッソスの影を見た新藤。彼女は「自己をみつめて、今までの価値観に別れを告げ、新しく思考を変化させて再生していかなければならないことがめまぐるしく起こっているように思えます。それは私たち自身がまるで、ナルキッソスのようではないか、と取り留めもなく考えを巡らせたことからこの作品を制作するに至りました」と、本作に寄せる想いを語っている。
また今回はグランプリのほかに“優秀賞”3点、“読売新聞社賞”1点、“審査員特別賞”4点が選ばれている。その中で特に筆者の目を引いたのは、石神雄介の『星を見た日』。寒空の下、身を寄せ合うふたりは、ただ静かに暗闇に走る流れ星を見つめている。冬の夜の一瞬を捉えながら、本作の画面を満たしているのは、何とも言えない温かみ。これは本作以外にも言えることだが、色選び、色使いが光る作品が多いのも、本展を味わう大きな楽しみのひとつだと言えるだろう。
会期中には、観覧者投票による“オーディエンス賞”の選出を実施。今の自分の琴線に触れるのはどの1枚か。自身の心に問いかけつつ、83の作品と対峙してみて欲しい。
取材・文:野上瑠美子
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