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クラシック
昨年のショパン国際ピアノ・コンクール。反田恭平、小林愛実の日本人入賞コンビに負けない注目を集めたのが、第3位の1996年生まれのスペインのピアニスト、マルティン・ガルシア・ガルシアだ。5月に初来日を果たした。
ライヴ配信されたショパン・コンクールでは、楽しくてたまらないという彼の表情が印象的だった。時に口ずさみながら弾く。
「もちろんプレッシャーはあったよ。コンクールだからね。でも日程が進むにつれて、だんだん楽しめるようになって、最後は会場を盛り上げようという気持ちだったんだ。ピアニストだって、楽しんでいいでしょう?
口ずさんでしまうのは本能で……。音楽には必ず歌がある。ピアノというのはそれを再現する手段でしかない。歌を聴いてもらうことが何よりうれしいことなんだ」
ファイナルの協奏曲は、多くの参加者が選ぶ第1番でなく、第2番だった。
「審査員も客席も、1番ばかり聴き続けているわけだから、たまに2番を聴いたほうが新鮮だと思って(笑)。実際、あの作品にはフレッシュなものを感じるんだ」
コンクール効果というか、今の彼は世界中どこへ行ってもショパンを弾くことを求められる。
「大好きなショパンを皆さんと分かち合うのはうれしいことだけど、バロックも現代曲も大好き。もう少しバランスよくいろんな曲を弾きたいかな」
今年は秋にも日本に戻ってきて、ベートーヴェンの協奏曲第5番《皇帝》を弾く。
「ベートーヴェンとの関係はラヴ・ヘイト。愛しているけど嫌い、みたいなね。彼自身も自分の中にそんな葛藤があったんじゃないかな。とにかく深い音楽だよね。ベートーヴェンほど、人間の精神面に深く入っていく作曲家はいない。だからピアニストはみんな、ベートーヴェンを弾くのに時間をかけるんだと思うよ。2週間ですぐに弾けるような作品はない。その意味で難しい作曲家だね。
《皇帝》は、彼の5曲の協奏曲の中で一番まばゆい作品だと思う。でも同時に、いい意味で無邪気さがある。新しい世界を見て驚いている子供のような感覚。その一方で人間の誇りみたいなものもあって、そんな相反するキャラクターによって、すごくいい曲になっているんじゃないかな。聴衆も、それぞれに異なる受け取り方ができるでしょう? 演奏するのも《皇帝》が一番楽しいよ」
1日先も1分先も、常に新しい自分でいたいというマルティン。秋にはまた新しい彼に出会えるはずだ。
■マルティン・ガルシア・ガルシア(p)
11/5(土)・6(日) サントリーホール 大ホール(東京都)
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