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ロシアの舞台芸術を牽引するボリショイ劇場による14年ぶりの来日オペラ公演が6月19日に開幕し、前日の18日に『スペードの女王』舞台稽古が行われた。
『スペードの女王』はプーシキンの小説を題材にチャイコフスキーが作曲をした、ロシア・オペラの最高傑作。18世紀後半のペテルブルクを舞台に、貧しい仕官ゲルマンが身分違いの恋を成就させるためカード賭博で大金を得る欲望にとりつかれ、狂気に陥る緊迫の物語だ。来日公演で上演されるのは2007年のボリショイ劇場新制作プロダクションで、ロシア国外での上演は今回が初めて。
注目は「ロシア人民芸術家」の称号をもつ演劇界の重鎮で、今回オペラ初挑戦となるワレリー・フォーキンの演出。上下に隔てられたモノトーン調の美しく幻想的な舞台美術を用いて、上段は街や日常の風景、下段は水や河を象徴する空間を構築。物語序盤は上段が中心だが、主人公ゲルマンがカード賭博の狂気に陥ってからは下段に比重が大きくなるという風に、登場人物の心理の光と闇を上下二段の対比構造で表現するなど、演劇畑の重鎮らしく内面描写を濃密に描いている。
緊迫の心理劇が際立つフォーキンの演出だが、壮麗な美術に反して小道具はほとんど用いられない。この演出には、オペラの根幹である音楽のエッセンスだけで濃密なドラマを描こうとする意図が見受けられるが、そこで重要な鍵を握るのが、こちらもオペラ初挑戦の指揮者ミハイル・プレトニョフだ。
世界的ピアニストとして活躍してきたプレトニョフだが、近年は自らロシア・ナショナル管弦楽団を創設し、オーケストラ指揮者としての評価も高めている鬼才だ。オペラ初挑戦ながら、そこはさすがにプレトニョフで、チャイコフスキーの他のオペラと比べるとシンフォニックな要素が濃い『スペードの女王』において巧みな手腕でオーケストラと歌手をコントロール。モノトーンが基調のステージに音楽で見事な色合いを表現してみせた。
フォーキンの演出、プレトニョフの指揮に応える歌手陣も錚々たる面々。ゲルマン役のウラディーミル・ガルージン、伯爵夫人役のエレーナ・オブラスツォーワ(共に19日・21日)などオペラ界の重鎮からボリショイ劇場の若きスター歌手までが集結し、本番さながらの鬼気迫る歌唱を披露した。
緊迫の心理劇を描く巧みな演出と音楽、名歌手たちが揃うロシア舞台芸術の最高峰、ボリショイ・オペラ『スペードの女王』は、6月19日(金)から21日(日)の3日間、NHKホールにて開催。チケットは公演当日まで発売。
また同ボリショイ・オペラ来日公演『エフゲニー・オネーギン』は、6月24日(水)から26日(金)に東京文化会館(上野)で開催。チケットは好評発売中。
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