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パリ・オペラ座、ミラノ・スカラ座など世界の桧舞台で活躍中の指揮者、大野和士が凱旋。秋のリヨン国立歌劇場管弦楽団との日本公演に先駆け、8月18日に記者会見を行った。
リヨン国立歌劇場は1756年創立と古い歴史をもちながら、近年では地域密着型プロジェクトで若年層の聴衆を獲得し、話題を集めている革新的なオペラハウスだ。「私がリヨン歌劇場と仕事をすることに決めた理由が、プロジェクトに共感したことです。例えば、現在の支配人が就任間もない頃、劇場前でダンスをしていたヒップホップのグループに劇場の練習場を提供したら、ダンスの世界大会で優勝した話が有名です。彼らは昨シーズンの『ポーギーとベス』にダンサーとして出演するなど、今や劇場にとって大きな存在。また移民や貧困層が住む地域に劇場の工場を作り、そこで無料の音楽会を開いたり、オペラの安価なチケットを提供したり、子どもたちに工場内の食堂を開放しています。他にもオペラ公演の託児施設で行う子ども向けワークショップなど、多彩なプロジェクトの結果、客層が非常に幅広くなりました。観客の4分の1が25歳以下というオペラハウスはどこにもありませんよ」と大野和士は劇場の革新性を熱く語った。
今秋に来日公演を行うパートナー、リヨン歌劇場管弦楽団については「フランスで国立オペラ劇場専属のオーケストラはパリとリヨンだけ。フランス各地から集った腕利き奏者ばかりなので非常にハイレベルです」と厚い信頼を寄せる。
来日公演プログラムは、フランスの作品が中心だが、注目はオーチャードホールでのオペラ・コンチェルタンテ(演奏会形式)『ウェルテル』(マスネ作曲)。原作は有名なゲーテ「若きウェルテルの悩み」。上演機会が稀少な作品だが、大野和士は以前音楽監督を務めていたベルギー王立モネ劇場で上演し、成功に導いている。「マスネは『ウェルテル』作曲に取り組んでいた時期に、バイロイト音楽祭で『トリスタンとイゾルデ』を観劇してワーグナーから大きな影響を受けました。慟哭のアリア「春の風よ、何故私を目覚めさせるのか」は中世アイルランドの詩ですが、『トリスタンとイゾルデ』の舞台もアイルランド。また物語も恋愛の三角関係、音楽も官能的な旋律が多く、まさに“マスネ版トリスタン”といえるでしょう」と語った。
1月に『賭博師』(プロコフィエフ作曲)、4月に『ルル』(ベルク作曲)をリヨン歌劇場で指揮し、辛口で有名な現地評論家からも絶賛された大野和士。世界的評価も目覚しく、ポスト小澤征爾の呼び声も高い彼の凱旋は秋の注目だ。大野和士指揮・フランス国立リヨン歌劇場管弦楽団の『ウェルテル』は、11月1日(土)・3日(火)にオーチャードホールで開催。チケットは発売中。
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