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世界最高のオペラハウス、メトロポリタン・オペラ(MET)が、日本公演開幕を控えた6月1日、「ラ・ボエーム」のゲネプロを愛知県芸術劇場 大ホールで行った。
東日本大震災やそれに伴う原発事故の影響で、海外のオペラハウスやオーケストラの来日公演キャンセルが相次ぐなか、世界最高峰の人気と実力を誇るMETの来日は、今後の来日公演実施の後押しにもなると予想され、日本の音楽界にも嬉しいニュースだ。
今回のゲネプロで上演された『ラ・ボエーム』は、『トゥーランドット』『蝶々夫人』などを生んだ大オペラ作曲家プッチーニの傑作で、METの代表的レパートリーのひとつ。19世紀のフランス・パリを舞台に、アパートの屋根裏部屋で共同生活する芸術家の卵たちの甘く切ない青春の日々を描いた本作は、「私の名はミミ」「ムゼッタのワルツ」などの名アリアや重唱の数々、美麗な音楽で愛される世界的名作だ。
まずゲネプロで特筆すべきなのは、ミミ役のバルバラ・フリットリとムゼッタ役のスザンナ・フィリップス。特にフリットリについては、キャスト変更にともない、急遽ミミ役を演じることになったにも関わらず、伸びやかな歌声は素晴らしいの一言。経験を積むことで表現しうる、浮き立つ恋心と、死にゆく悲しみの感情を見事に伝えきった。現代を代表するイタリア正統派ソプラノの彼女にとって、イタリア・オペラの名作『ラ・ボエーム』のミミはまさにはまり役といえる。
マリウシュ・クヴィエチェン(マルチェッロ役)、ピョートル・ベチャワ(ロドルフォ役)、エドワード・パークス(ショナール役)、ジョン・レリエ(コリーネ役)の男声陣、MET首席客演指揮者のファビオ・ルイジ率いるオーケストラと合唱団も息の合ったアンサンブルを披露。歌に寄り添い、時にはぶつかり合うほど感情を増幅させるプッチーニの音楽は、役者とオーケストラの息があってなければなしえぬもの。公演直前までキャスト変更が発生した今回、本来ならば通常の完成度を期待するのは難しいと思ってしまうような事態だが、これほどの完成度の高いアンサンブルを聴かせるところは、やはりMETの本領の確かさだ。
歌手やオーケストラが超一流なのはもちろん、セットの豪華さでも知られるMET。奥行きのある芸術的なセットは必見だ。その中で繰り広げられる若者たちのピュアな恋模様、そして死によって引き裂かれる深い悲しみは思わず深い感動と涙を誘う。
メトロポリタン・オペラ日本公演は、6月4日(土)・5日(日)に名古屋で、6月8日(水)から19日(日)まで東京で開催。東京公演はチケット発売中(名古屋公演は完売)。
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