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20世紀ドイツを代表する作曲家パウル・ヒンデミット(1895年〜1963年)の没後50年を記念して、オペラ『カルディヤック』の本邦初演がまもなく新国立劇場で行われる。
ドイツ表現主義のみならず、20世紀を代表するオペラのひとつに数えられる『カルディヤック』。第一次世界大戦での敗戦後、ナチスの台頭、第二次世界大戦の勃発という政情不安のドイツで書かれた本作。18世紀末の幻想文学作家E.T.A.ホフマンの「スキュデリ嬢」を翻案し、ルイ14世紀の治世で悪名高いラ・ヴォアゾンの毒殺事件の余波に揺れるフランス・パリを舞台に、天才金細工師カルディヤックら登場人物たちが織り成すドラマを通じて、人間不信の蔓延する社会における孤独な人間像を鮮やかに浮き彫りにしていく。
今日では決して上演回数の多い作品ではないが「決してマニアックな作品ではない」と語るのは、今回の本邦初演の演出を手がける三浦安浩。「金菅や打楽器のリズムを強調するような、刺激的でとてもいい音楽。一方で、原作のホフマンの味も舞台で表現できたらと思っています」と抱負を語る。ホフマンは後期ロマン派を代表する幻想文学の奇才。そのファンタジックな部分も取りいれながら、1920年代のモノクロームの犯罪映画をイメージした演出も想定しているとのことだ。
また、三浦安浩が本作において注目しているのは、カルディヤック以外の登場人物には名前がつけられていないということ。カルディヤックの娘と恋人の士官、貴婦人や金商人、衛兵隊長、騎士などは、生い立ちも出会いの経緯も謎のままだという。「唯一名前のついた『カルディヤック』も、金細工職人と父親(妻は不在)、そして殺人鬼という多重人格者で、固有名詞というよりは伝説化したブランド名のようなもので、名前だけが一人歩きしているような感じです。こうした匿名性は、人間性を突き放して、それこそチェスの駒のように動かし、即物的に人間をみているように思えます」と作品のポイントを語る。作品が誕生した当時と同じく、“不安な時代”といわれる現代社会を生きる我々の心にも何かを訴えかける舞台となりそうだ。
ヒンデミット没後50年記念・新国立劇場オペラ研修所公演『カルディヤック』は、3月1日(金)、2日(土)、3日(日)に新国立劇場 中劇場にて上演。チケットは発売中。
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