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5月、東京都交響楽団を指揮するベルトラン・ド・ビリーは、パリ生まれのフランス人。コンサートとオペラの両輪で活躍し、2002〜2010年にはウィーン放送交響楽団の首席指揮者兼芸術監督を務めるなど、ヨーロッパで多くのポストを歴任している指揮者だ。すでに何度か来日して日本でもおなじみだが、都響にはこれが初登場となる。「ぜひ呼びたい」と彼を指名したのは、今シーズンから都響の第5代音楽監督に就任した大野和士。その魅力を次のように語っている。
「以前から評判は聞いていましたが、初めて出会ったのは彼がバルセロナのリセウ大劇場で首席指揮者を務めていた頃です。大変な才人で、学生時代からヴァイオリニストとしても名を馳せながら、指揮者としてもどんどん頭角を現してきました。作品への洞察力、スコアを読み込む力、いずれも長けており、作品全体を把握してその構造を見通しよく明らかにする力が素晴らしいと思います」
今回はふたつの公演を振る。5月13日(水)の定期演奏会(東京文化会館)はフランスの現代作曲家アンリ・デュティユーとブラームスというふたりの作曲家の「交響曲第2番」。そして5月17日(日)のプロムナードコンサート(サントリーホール)では、ベートーヴェン、モーツァルト、シューベルトというウィーンゆかりのプログラムを聴かせる。彼ならではのプログラム・ビルディングに大野も期待を寄せる。
「デュティユーとブラームスのプログラムは、いわば相対するふたつの大曲。まったく異なる内容、形式をもつ作品です。きっと熱く、しかも整然とした解釈で聴かせてくれるでしょう。また彼は近年、ウィーン放送響で芸術監督を務めるかたわら、ウィーン国立歌劇場にも登場し、フランスもの、ドイツもの、いずれにも如何なくその才能を発揮してきました。ベルトラン・ド・ビリーというひとりのフレンチ・コンダクターの感受性の中に、全ヨーロッパ的、全世界的なものが共存している、とでも言いましょうか。彼の音楽の中に、きっと目を見張る点を見出すことになると思います」
大野は今シーズンの都響定期全体のテーマを「対照の妙味」と表現しているが、デュティユーとブラームスなどは、「フランスとドイツ」「現代と古典」がそれぞれに互いを照らす、まさにそのテーマに合致した選曲だろう。楽しみな初顔合わせになりそうだ。
文・宮本明
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