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恒例の秋のリサイタル「夜会」を、今年も開催する熊本マリ(10月8日・東京文化会館小ホール)。今回は「ちょっと早いバースデーパーティ」というテーマが掲げられた。じつはこの「夜会」、毎年彼女の誕生日(10月15日)前後に行なわれるので、つねにバースデーパーティではあるのだけれど、今回あえてそう銘打った理由は、ふたりのゲストの存在。カウンターテナーの米良美一と、ギターの荘村清志という、やや異色の顔合わせでバースデーを祝う。
「このふたりと同時に共演できるなんて、今までにないぐらい、弾くのが自分自身でも楽しみなコンサートです」。ともに長い付き合いの音楽仲間だが、じつは米良との共演は今度が初めてなのだそう。「レコード会社の担当ディレクターが同じだったのでデビュー前から知っていて、ずっと仲がよかったんですけど、なかなか一緒に演奏する機会はなくて」
つまりこの初共演が、特別なバースデー・プレゼントだ。もちろんおなじみの《もののけ姫》も聴かせてくれるが、音楽通にはモンポウの歌曲《君の上には、ただ花ばかり》も大きな注目ポイントだろう。熊本マリといえば、日本にモンポウを紹介した伝道師的存在でもある。「以前、モンポウの歌曲を彼と録音しないかという話があったのですが、結局実現しなかったんです。今回は1曲ですが、彼の声でそれを披露できるのがなによりもうれしいです。彼の繊細でやさしい声はモンポウにぴったりなんです」
一方、荘村清志とはもう20年以上の共演歴がある。「何度も伴奏していますから、荘村さんの息づかいがわかります。一緒に弾いていて安心できますね。東京文化会館の小ホールは、ギターにもとても適した広さだと思います。ホールが大きすぎると、ギターの生の音の良さをちゃんと受け取ることができませんから。米良さんのモンポウも、サロンのような、小ホールの親密な空間で歌ってほしい。ふたりの音色をじっくり味わうには絶好のシチュエーションだと思います。おふたりにも、ぜひ自由に楽しくやっていただきたいです」
プログラム全体は、叙情的なしっとりとした音楽を軸に、最後はお得意のスペインものも交えて賑やかに盛り上がる。リラックスした気分で楽しめる、まさに夜会、まさにパーティ。でも、慣れ親しんだ有名小品の数々のなかに、たとえばドビュッシーの《バラード》など、比較的聴く機会の少ない佳曲もさりげなく滑り込ませる。「美しい曲を楽しく聴いていただくなかにも、本物を味わってもらいたい。いつもそう意識して選曲しています」
その絶妙なバランス感覚が、クラシック初心者からベテランまで、すべての聴き手の気持ちをつかむ熊本マリ流だ。もちろん二次会(=アンコール)にもじっくりと趣向を凝らしている模様。例年どおり、ヒロココシノのあでやかなドレスもパーティを花を添える。秋の夜長の華やいだ夜会。ピアニストのおもてなしに、あたたかい拍手で応えたい。
取材・文:宮本明
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