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作曲家・ピアニストの林晶彦が自作によるコンサートを開く[11月8日(月)東京オペラシティ リサイタルホール]。メインは画家・松井守男の作品『光の森』に触発されて作曲した、同名のピアノ・ソロ曲の初演だ。
「今年、フランスから帰国中の松井さんにお目にかかりました。神田明神に奉納された『光の森』を見て圧倒されると同時に、それが鎮守の森を描いていると聞いてびっくりしました。じつは最近、茨城の鹿島神宮を訪れて鎮守の森を歩き、これを音にしたいと思っていたのです。偶然のシンクロ。驚きました」
松井守男(79)はフランスを拠点に活躍する画家。独特の繊細な抽象画が高く評価され、2003年にはフランス最高位のレジオン・ドヌール勲章を受けている。
「『光の森』は遠目には森の青や緑なのですが、近づいて見ると、紫やオレンジや赤、いろんな色が入っているんです。これを音にしたらどうなるのだろう。絵画は全体を見渡すことができますが、音楽は時間の芸術なので、ひとつのストーリーのようなものを想像しています。古代に戻って、そこから歩んでいき、最終的に光の森に入っていくような音楽の構造です。沈黙があって、生態系のように多様な。まだわからないところがいっぱいあるのですが、ひとことで言ったら神秘ですね」
ピアノ曲《光の森》は、単一楽章の20分ほどの作品になる構想。
「いま苦しんでいる人がいっぱいいて、絶望とか闇を感じていると思います。そこに心の中の光とか平安とか、聴く人が、そして僕自身もそういうものを感じられるような音楽になったらいいなと思っています。自分では新しいものを手探りしているような感じですが、それは昔からあったものなのかもしれません。雷の音とか、風の音とか、自然の中に。僕はずっと、論理ではなく、音の中に本当のものを探してきた。それが松井さんの作品の中にもあるのを感じるのです」
林はかねてから、絵画にインスピレーションを得た音楽を、シャガールを中心に作曲してきた。今回も他に、即興や声楽曲(ソプラノ:中川詩歩)も含めた8曲のシャガール関連の作品を演奏する。
コンサートの開演前には松井守男と林のプレトークも予定されており、二人の芸術観の一端も伺い知ることもできそう。なお、同時刻にインターネットによるライブ配信(1週間のアーカイブ配信付)があり、そちらでは『光の森』の絵を見ながら音楽を聴くことができる。
文:宮本明
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