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クラシック
聴き逃したら後悔するはず。番組を生演奏で再現するだけのコンサートでない。6月と9月に開催されるNHKスペシャル『映像の世紀』コンサートは、音楽と映像とが、がっぷり四つに組んだ迫真のコラボレーションだ。作曲とピアノの加古隆に聞いた。
「演奏する音楽は『映像の世紀』『新・映像の世紀』のために書いた曲です。しかしそれを今回の構成のキーワードやコンセプトに沿って、そしてピアノとオーケストラという編成を念頭において書き直しました。まず先に、映像抜きのコンサートでも十分に聴いていただけるような音楽を作り、それが完成したあとで、音楽の起承転結や流れを考慮しながら、映像を再編集してもらった。このプロセスは今までになかったものです」
つまり音楽も映像もこのコンサートのために生まれ変わったもの。そして同時に、音楽は、映像を説明したり伴奏したりする役割から自由に解き放たれることになる。「どちらが主でも従でもなく、互いが100%のパワーでぶつかり合う形です。しかも生のコンサートですから、それが見る人、聴く人の心に直接飛び込んでくる。その力は大変なものです。そこに今までにない大きな感動が生まれうる。実際、生まれていると思います」
コンサートは、映像の始まりから現代までを時代順に追った7つの部分からなる。全体が巨大な音楽作品だと考えてもいいだろう。番組を代表する名曲であるメインテーマ〈パリは燃えているか〉がさまざまに形を変えながら繰り返し登場するのも、まるで循環形式の主題のよう。
ちなみに「パリは〜」は、パリ破壊を命じたヒトラーの言葉から取った。「パリ」と「燃える」とが、人間の豊かな生活と愚かな戦争の歴史の二面性を象徴し、番組の主旨と「本当にうまく結びついた」と自負する。
番組で描かれた20世紀は残念ながら戦争の世紀でもあった。その愚かな歴史が今また繰り返されている。そんな時、コンサートは私たちに何を語りかけるのか。「平和の尊さは、誰もが理性ではわかっています。でも今回はそれを、あえて言葉ではなく、映像と音楽とで、感性に直接語りかける。音楽も映像も、国や人種を超えて語りかけることができます。その2つが今までにない一体感で合体するとで、大変な力強さを生んでいます」
長崎公演では広島交響楽団が演奏することも重い意味を持つ。
「広島でこの作品を上演した時、やはり何か違うものを感じました。それがエモーショナルな力になる。今度は長崎で、しかも広島からオーケストラが来てくれる。特別な空間、時間になると思います。大いに期待しています」
使用ピアノは加古の愛するベーゼンドルファー・インペリアル。その深い響きがオーケストラと共振して、私たちにいま≠問う。『映像の世紀』コンサートは、6月10日(金)東京・サントリーホール、6月26日(日)長崎ブリックホール、9月19日(月・祝)愛知県芸術劇場大ホール。3公演とも指揮:岩村力、ナレーション:山根基世。
(宮本明)
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